激しい愛の悲劇
中山可穂『弱法師』から『卒塔婆小町』
本日から定期的にご紹介したいのが中山可穂先生です。
表現力と人間の感情の移り行きを書くのが得意で、コアなファンが多い印象です。
中山先生の作品中でも、『白い薔薇の淵まで』『感情教育』『王子の背中』が代表作としてあがると思います。
しかし、今回ご紹介するのは、中山先生の中編集『弱法師』に収録されている『卒塔婆小町』です。
理由は単純に一番好きな話だからです。
この中編集は愛がテーマになっています。
愛が深まると何が起こるのか。
手にすることができないと知っていても、追い求めてしまう。
普遍化するとこのような表現になりますが、もっと激しく虚しい愛を『卒塔婆小町』では描いています。
物語の主人公は女の編集者と男の小説家です。
小説家に惚れられ、口説かれた編集者。
しかし、一回りも歳が違う青年の言葉を本気にはしません。
そこで、小説家は「百本の小説を書いたら、信じてもらえますか?」と言います。
悲劇の始まりです。
この編集者は「じゃがいもよりさつまいもが好き」と言っているので、中山先生特有のレズビアンのキャラです。
彼の小説を愛しても、彼自身のことを恋愛対象として見ることはないのです。
小説家はそれでも小説を書き続けます。
その間、敏腕編集者はバックアップをかかしません。
そして、百本目ができあがったとき……。
激しい愛、虚しい愛の究極を見るはずです。
他の2編も愛がテーマなので、ぜひ、読んでみてください。
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